鈴が咲く【前編】


離れから出て
稽古場へと向かう。


「っ!
咲様!!」

稽古をしていた女の子...詩乃が
シノ
姿を見ると駆け寄ってきた。

「詩乃。
調子は?」

「すごくいいです!
また、見てくれますか?」


「もちろん。
今日は龍輝様は...?」
   リュウキ

龍輝様は、
草子や、見習い達の師範。
草子の総監督を務めていて、
御老主様の中で唯一、私を認めてくれた人。




「あっ...
御老主様に呼ばれて...
今、本家の母屋に...」


御老主様に...


「わかった。
ありがとう

...詩乃、
龍輝様が来るまで私が稽古をつけようか」


そう言って
一瞬こわばった顔を
気づかれないように微笑んだ。

「ほんとですか!」

「うん」

「お願いします!!」


ぱぁぁぁ!

と顔を輝かせた詩乃に返事をして
稽古場の奥に足を進めた。
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