鈴が咲く【前編】
決着がついてすぐに
こちらを向いて構えを取る詩乃。


「うん。
良くなってる」


「ありがとうございます!」


「実践の場には出ているの?」

「いえ。
まだ組手をしてもらうぐらいです」


構えたまま
下に顔を伏せながらそう言った詩乃。


「そう。

...これから龍輝様にも
お話しするけど、

これからの稽古では
持久力...つまり、
長く戦っていられるように
力をつけていくように」

「はい!」

「この年でここまでできるのはすごい。

これからもがんばって」

「はい!
精進します!」







稽古をつけてもらった後は、
必ずこうやって講評を言う。

最後には、
『精進します』がお決まりで、
見習いでも、草子でも、
どんな人でも
目上の人に講評を受けた時は
こういって終わるのが聖林流。



「じゃあ、詩乃。
私は一度本家に戻るよ」

「はい!
ありがとうございました!」


満面の笑みで
そう返してくれた詩乃に
一度微笑んでから、稽古場を後にした。
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