鈴が咲く【前編】
「あんな小娘なんざ、
聖林の一族にふさわしくない...!」


ブワッ!!!


聞こえた声に
怒りが湧き上がる。


力が抑えきれずに
髪が巻き上がった。

三人の足元から
一気に風が沸き起こって
あたりが淡い光に包まれる


近くの障子がガタガタと音を立てる


『っこの...!』

楚宙の手が
怒りに震えていた。



おさまらない怒り。



だんだん強くなっていく光。




スッ...

「三”人”共、どうしたの?」



足音を立てずに、
スッと俺らの前に現れた、

『咲(様)...』



「そんなに怒ってるなんて。

ダメだよ?
これ以上したら、
いろんな物が壊れちゃうでしょ?」


そういってやさしく微笑んだ咲。


その言葉を聞いて、
だんだんと力を落ち着かせた。



久しぶりの、スイッチを入れてない咲。

学校に行ってからは
ほとんどの時にスイッチが入っていて
そのスイッチが、俺は嫌いだ。


周りを警戒して、
最初の時は切り替えていたスイッチも
最近はほとんど入れっぱなし。


本当の咲がどんどんと消えていくかのようで、
咲が、自分を見失ってしまうかのようで。

俺は嫌いだ。



本当は、咲じゃないのに。
あいつは___なのに...

これ以上別の人格になってほしくなかった
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