鈴が咲く【前編】
『サァ、姫よ。
我は姫と呼んだママで良いのカナ?』
燈兜の優しい声。
「……っ鈴、
鈴って呼んで。」
燈兜にそう聞かれることが嬉しかった。
思わず、鈴と口にする。
『鈴、鈴姫か。』
「うん」
鈴、と呼ばれたときに懐かしさが
込み上げてきた。
鈴……?
鈴、って…その、呼び方は……
私のことを見てくれなかった。
小さい時も甘えられなかった。
今は、燈兜が見てくれる。
燈兜に、甘えられる。
誰も、見て、くれなかった…?