鈴が咲く【前編】
平穏な幸せ
綺麗な絵付けがされている櫛で
まっすぐに伸びた黒髪を梳いて整える。
『姫、良いカナ』
襖の外から声がする
「燈兜。
大丈夫だよ」
襖が開いた音がして、
振り向くと燈兜が部屋に入ってきていた。
『用意を我がスルと言ったのでナ
選んでキタ』
「ありがとう…!」
燈兜がその手に持っていたのは、
すみれ色の生地に紫色や白色の小さい花々が散っている着物。
紫色の袴とあってすごく綺麗だ。
「綺麗……」
『鈴姫に似合うと思っテナ』
そう言って差し出される袴を受け取る。
『ソノ長く美しイ黒髪には
華やカナ色も合うダロウが……
この色モ見てみたカッタのだ。』
「ありがとう……
来てみるね」
そう言ってついたての裏に行って着替える
『この後で皆に
鈴姫ヲ紹介しヨウト思うのダガ……』
「あ、うん。
今まで敵対してたし不安だけど……
挨拶させて欲しい。」
ついたて越しに会話する。
『大丈夫だ。
鈴姫の今までのことは皆理解しテクレル。
誰彼構わず襲ってイルように
思ワレテいるのもわかっていルシナ』
「うん……ありがとう」
着替えを終えてついたてから出る
「どう…かな……」
『おォ……美しイナ……』
「っありがとう」
『おイで』
座っている燈兜の前に行って座る。
「っ……」
燈兜が櫛でゆっくりと髪をとかしていく。
懐かしいような、
落ち着く感覚が広がる。