鈴が咲く【前編】
『スズ姉ェ様!』
鈴の力を感じて集まってきていた族の者の中から
飛び出してきた、藤の子。
最初は毛嫌いしていた姫のことを
今では姉のように慕っている、藤から生まれた娘だった。
飛び出してきた勢いのまま、ものすごい力が下から突き上げる
柱の中に飛び込んだ。
『ッ!?』
姫の横に膝をつき、
顔を伺うように耳を寄せた藤。
手を組み、俯いたまま、
何の感情も見えない顔で姫の口が動く。
『藤…?』