鈴が咲く【前編】
人間が、山を登ってくる。
普通の人間じゃない。
こっちの世界の人間…
先頭に立つ男の顔を私は知っている。
張ってある結界のうち
弱いものが二つ、見破られた。
私は、この人間達を、知っている。
かつての頼れる人が
かつてのフラッグシップが
かつての相棒と呼ばれていた人が
他の人を引っ張って先導している。
燈兜の声が聞こえる…
どうしようか。
ここにわざと来させて戦おうか。
少し迷ってから影武者狐を一匹、
隊列の1番後ろの者に付かせた。
そのまま意識を浮上させる。
燈兜の指示一つで、
空気が変わって、誰ひとりとして立ちすくむことなく。
どこかとは比べ物にならないほどに早く。
みんなが同じ目をして動いていく。
私も。
「最前線でやってやる……」
私はもう、この一族の一員だ。