鈴が咲く【前編】



斗真の胸の中で
涙が溢れて止まらない


ぎゅうっと強くなる腕の力に合わせて
私も斗真の着物を掴んだ





会いたかった。会いたかった。会いたかった。

ずっと、
ずっと記憶の奥底に大切にしまってた。



双竜と呼ばれて。
相棒と呼ばれて。
いつもどこかに引っかかるような
違和感を感じていた。

いつしかその違和感に慣れて
気のせいだ気のせいだと押し込めてきた





お爺様と三人で縁側に座って話した夕暮れの風。

部屋に一人でいた私に稽古を抜け出して会いに来てくれた時の眩しい日差し。

一緒にあちこちの蔵の中身を捜索した夜の虫の音。

神社の裏で泣いていた私の隣にずっと黙って居てくれた時の雲の厚さ。

蔵に閉じ込められた私を助けに来てくれた雨の日の傘。



全部、全部、
押し込めていた分まで
溢れて溢れて止まらない


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