鈴が咲く【前編】
独壇場
「柳、よろしく!」
「楓!頼むぞ!!」
空にいる二人を見ずに
北側に走りながらそう声を上げた。
屋敷を大きくぐるっと回って北側に向かう。
ゴツ、
と拳をお互いに当てて、
私は左へ、斗真と夜召は屋敷に沿って右へ。
「!」
状況が見えるところまで来てから、
ザッと足を滑らせて向こうの死角に入る。
『卑怯ナ…』
相手に背を向けている燈兜が見えて
目を見開いた。
敵に背を向けるなんて、
燈兜がそんな初歩的なミス…?
「っ!!」
縛りか何かで動けなくなった一族に覆いかぶさるようにして
代わりに術を受けている…!?
ハッとして燈兜以外に目を向ければ
殆どの者は苦悶の表情を浮かべて倒れ込んでいるか、
悔しげな表情を浮かべて身動き一つせずにいるか。
そのほぼ全てに、
燈兜が保護術をかけていた。