鈴が咲く【前編】
「はい、ストップ」
「っ!」
パッと後ろから抱きすくめられる
肩に回った腕の感触と声。
「斗真…」
少し体制をずらして後ろを見ると
斗真の横からチラリと
柳と楓の肩に手を置いた夜召の姿が見えた。
「落ち着け。
お前は誰だ?」
肩に顎を乗せて
私越しに3人を見据えながらそう問う斗真。
「わた、し、は…!」
「お前は鈴だ。
誰かの駒でも人形でもない。
見極めろ。
お前には、最善がわかるはずだ」
少し低くて落ち着いていて。
言い聞かせるかのようなゆっくりの声。
すぅっと目の前が
クリアになったかのように錯覚する。
一本の筋が見えるように
必要な箇所に光が当たるように
状況が見えてくる。