鈴が咲く【前編】
「燈兜、もういいからっ!」
言い切ると同時に上げた目線が夜召とぶつかる。
アイコンタクトを送ると
先に夜召が飛び立った。
『守ラ……ナく…ては…』
っ…!!!
「私を見なさい燈兜!!!!!」
ほとんど開いていなかった目が、少しだけ開かれた。
「術を解いて。
そして、力を抜いて私を受け入れて。」
薄く開かれた目に、光が反射する。
『す、ずヒめ…』
印を組んでいたであろう手を
手のひらで包んだ。
「もう、大丈夫だから。
みんな避難させてる。聖林も殲滅した。
…術を、解いて。」
術をかけ続けるために未だにこわばらせていたであろう右腕から、
徐々に力が抜けていくのを感じてホッとする。
「お願い、受け入れてね」
ふぅ、と息を吐いて、
片手で組んだ印を燈兜の胸の前に置いた。
ゆっくりと燈兜の体の中に気を入れていく。
燈兜は妖鬼で、私は人間。
本当は燈兜の気のことを私は邪気と呼ぶ立場だし、
燈兜からしても私の気は体に丸ごとぴったりと適合するわけじゃない。
燈兜が拒否したり受け入れなかった場合
私の気は燈兜の体に吸収してもらえない...
「っは...」
燈兜の中から枯渇しそうになっていたであろう霊気を
私のを送ることで補う。
体中にある怪我と、
みんなのことを庇ってできた体内にある負荷。
怪我なら治癒で治せるけど...っ
みんなに与えられたはずのダメージが
燈兜に蓄積されてる。
これは下手に手が出せないから、
戦線の真っただ中の今は、
本人の治癒力とか霊力に任せるしかない。