鈴が咲く【前編】
「楓、今指示出してないけど、
もう既に相手を制圧してるなら
近くの戦場に合流するか、
屋敷まで帰ってきて!」
最後にそう言って
意識をまた自分の方まで戻ってこさせる。
怪我人はやっぱり多いはずだよね...
一度屋敷に戻るべきか...
ほんの数時間前かけた道を、
もう1度駆け抜ける。
数時間しかたっていないはずなのに
見える景色は大きく変わっていた。
「キヨ、いる!?」
屋敷の門をくぐって横に逸れる。
縁側に面した中庭から
中に問いかけた。
『鈴様!
ご無事で!!』
パタパタと足音がしてキヨが顔を出した。
「どうなってる!?」
『ほとんど処置はしておりますが
無理に契約を結ばされそうになった者もおるようで……』
言葉を濁す。
ッ…はぁ??
『っ鈴様!
抑えてください!!』
自分を中心とした円ができて、
白い光と風が巻き起こった。
キヨの珍しい大きな声に
徐々にその気をおさめる。