鈴が咲く【前編】
「鈴。」
気味悪いくらいに静かになった里。
どこかのお祭りのあとのように
すっぽりと何かが抜けたみたいで
頭が働かなくて、呆然と立ちすくんで
ついさっきまで戦場だった場所を見る。
拘束した聖林達を全て山の外に放りだして
結界を張り直して。
負傷者を全員屋敷内に運んで。
負傷者ほぼ全員に気を分けたり、治癒したり。
いろんな人と入れ違いになってほとんど
人伝いに情報が伝わったり
各自やるべきだと思うことをやったりしてて
今みんながどこにいるのかすらわからない。
そんな中でただ一人喧騒の去った里で
立ちすくんでいた時。
後ろから声をかけられて振り向く。
「斗真…」
二人で何も言わずに
握った拳の甲同士をコツンと当てた。
「……終わったな」
「うん…」
これでもう、全て。
全て終わったんだ……