素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「その代わり1つだけ約束してくれないか?」

「……え……?」




お父さんの言葉にお母さんは何か気が付いたように優しく微笑んだ。
まるでお父さんの言葉が分かったみたいに。


私は何が何だか分からず、どう反応していいか分からなかった。
そんな私を優しく包み込むかのように温かい言葉が空気に溶け込む。




「いつか慎吾が連れてくる本当の彼女が。
今、私たちの前にいる、夏香ちゃんであって欲しい」

「そうよ~!
夏香ちゃん以外に考えられないんだから!
もし他の子を連れてきたら追い返しちゃうわ!!」




そう言って笑う2人に私は我慢できなくなった。
こぼれ落ちる涙は私の頬をつたる。




「でも……私は……」

「“でも”はナシよ!
夏香ちゃん……あなたは慎吾の彼女じゃないかもしれない。
でも……あなたの慎吾への想いは誰よりも強いんじゃない?」

「好きなんだろ……慎吾の事」




橘部長の名前が出た瞬間、私に体は分かりやすいくらいに反応する。


火照る顔、汗ばむ手、弾む鼓動。
全てが私の想いを伝えてくれる。



でも……きちんと言葉にしたい。
だから……。



「はい。大好きです」



これが私の本当の気持ちだ。
嘘偽りのない言葉を私はしっかりと口に出した。


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