素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「状況は大方、総務課の奴に聞いた。
木山さん、泰東が失礼な態度をとったみたいで申し訳ありませんでした」



橘部長は木山さんに向かって頭を下げた。
それを見た木山さんは満足そうにいやらしい笑みを浮かべながら、嫌味を口にする。



「まったくですよ。
部下の教育もまともに出来ないとは」

「ちょっと待って……」

「泰東」

「っ……」



橘部長の事まで悪く言い出す木山さんに腹が立って口を挟もうとすれば、それを制する様に橘部長は私の名前を口にする。


仕方がなく口を閉じたが、悔しい気持ちでいっぱいになる。


私のせいで橘部長が嫌味を言われたと思うと……。
苦しくて、苦しくて、頭がおかしくなりそうだ。


そんな私たちのやり取りを見た木山さんは勝ち誇った顔で私を見てくる。



「君も謝罪したらどうだ?
今なら許してやらなくてもないがね」



態度は悪かったかもしれないが、私は間違った事は言っていない。


でも、謝るしかない……。
これ以上、橘部長に迷惑を掛ける訳にはいかないから。



そう思い口を開こうとすればまたもや、橘部長は私を呼んだ。



「泰東」

「はい……」

「お前が謝る必要はない」




橘部長は、凛とした声で言い放つ。



いきなりの展開に私を含め、この場にいた全員が驚きを隠せなかった。
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