素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「貴方は田辺の事を侮辱したそうですね?
それを聞いて黙っていられる訳ないでしょう?」

「それは……」





橘部長の言葉に木山さんは悔しそうに顔を顰める。
その隙を逃さない様に一気に言葉が放たれた。




「仲間を侮辱されて……悔しくない人間なんていない!
泰東が貴方に手を出さなかった事に感謝してください。
殴られても、おかしくない事をしたんですよ」

「き……君は何を言っているんだね!?
まったく……けしからん。これだから最近の若者は……」




ブツブツと呟きながら、木山さんは逃げるようにどこかへ行ってしまった。




「……みなさん、お騒がせしてすみませんでした。
泰東、お前も謝れ」

「あっ……はい。
ご迷惑をお掛けしてすみませんでした!!」




木山さんがいなくなって、唖然としている総務課の人たちに頭を下げる。
橘部長も深く頭を下げてくれていた。




「……君、すごいよ!!」

「謝らなくていいよ!悪いのは木山さんなんだから!!」

「なんか、スカッとした!ありがとう!!」




頭上から降ってくるのは優しい言葉だった。
恐る恐る頭を上げれば、言葉同様に優しい笑顔が私と橘部長を包み込んだ。




謝ったら、逆に感謝された。
戸惑いながら橘部長を見れば、同じような気持ちなのか彼の顔も少し戸惑っているように見えた。

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