素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「……」

「あの……橘部長……」



スタジオを出て会社へと戻っているのだが、先ほどから橘部長は口を開こうとはしなかった。
いつも穏やかと言えない顔は、恐ろしい事になっていた。


眉間にシワが寄っていて、近寄りがたい空気を出していた。



「泰東」

「はい!」


やっと口を開いてくれた、その事が嬉しくて喜んだがその喜びは一瞬にして消えていった。



「きゃっ!?」

「……」


強引に引っ張られ、路地裏へと入れられた私。
鋭い目つきで私を見下ろす橘部長が目に映る。



「あれほど警戒をしろと言っただろ!!
お前の警戒心が薄いから簡単にキスなんかされるんだ」



確かに、前に橘部長に注意された事がある。
大樹と近い距離でいた時に。


でも、どうしても納得いかない。



「警戒心って必要あるんですか?」

「……」

「だって一緒にお仕事をする……!?」

「……」


それ以上何も言えなかったのは私が言葉を言えない状態だから。
だって、私の唇は……橘部長の唇によって塞がれていたんだ。


優しい温もりが私の唇を支配する。
最初は触れるだけのモノだったが次第にそれは深いモノへと変わっていった。

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