素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「んっ……」

「……」



頭の中がしびれるような感覚に陥る。
そんな私に気が付いたかの様に唇はそっと離れていった。



「これで分かっただろう……。
お前は警戒心が薄すぎるって」

「……違う……」

「何だ?」

「これは……橘部長だから……」

「……泰東……?」

「……お先に失礼します」



私は橘部長に背を向けて走り出す。


私はおかしい。
いくら好きだからって無理やりされたのに喜んでるなんて……。


バクバクと揺れ動く心臓を押さえながら走り続ける。



「……ばかっ……」



誰に言った言葉だろうか?
いきなりキスした橘部長に?キスされて喜んでいる自分に?


違う。
……逃げ出した自分にだ。


あの場で告白でもしていれば……。
何かが変わったかもしれない。


こんなに胸が苦しい想いをしなければいけないのならいっそ……。
全てをあなたに打ち明けた方が楽じゃないか。

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