素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「夏香、気合入ってるな?」

「そう?」



オフィスに戻った私は早速仕事に取り掛かっていた。
今私に出来る事は目の前にある仕事を頑張る事だ。


翔也さんとのコラボ商品を、絶対に成功させる。
その意気込みが大樹にも伝わったのか驚いた顔で私を見ていた。



「泰東、そんなんにやる気があるのならこれもお前に任せる」

「橘部長!!分かりました!!ありがとうございます」

「……ふっ……」



いつの間にか私の後ろにいた橘部長は私にファイルを渡すと、優しい顔つきに変わった。
橘部長が何を想っているかは、分からないけど……この顔……凄く好きだ。



「どうした?」

「い……いえ」



橘部長は不思議そうに私を見ていた。
どうやら、私は橘部長に見惚れていたようだ。


慌てて顔を逸らせば、橘部長の声が私に向けられた。



「……あまり無理はするなよ」



小さな……本当に小さな声だった。
でもしっかりと私の胸に届いたんだ。


何処までも優しい彼に私の口元は自然に緩んでいた。



「ありがとうございます」



私も小さな声で発する。
既に橘部長は自分のデスクへと歩き出していたが、私の声が聞こえたみたいに立ち止まりこっちを向いた。



そして、一瞬だけふわりと優しい笑顔を浮かべると、そのまま歩いて行った。



橘部長が去った今でも、私の鼓動はおさまらない。
苦しくて、どうにかなってしまいそうだけど……。


この苦しさは嫌なものではない気がする。
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