素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「終わった~!!」



仕事がひと段落した所で私は大きく伸びをする。
身体の疲れはあるけど、心は満たされている様な気がした。



「あれ……?誰もいない」



周りを見渡せば、誰1人そこにはいなかった。
時計を確認すればお昼休みの時間帯だった。


そう言えば、さっき大樹にお昼を誘われていた気がする。
仕事が中途半端だったから断ったんだっけ。


おぼろげな記憶を掘り起こしてタメ息をつく。
かなり集中していたみたい。
記憶が曖昧すぎて怖い。


とりあえず、ご飯でも食べに行こう、そう思い立ち上がればゆっくりとドアノブが開かれた。



「橘部長?」

「なんだお前、まだ仕事していたのか?」

「はい」



そこから入ってきたのはコンビニの袋を掲げた橘部長だった。
橘部長に会えるなんてラッキーだな。
なんて思いながら彼に駆け寄る。



「橘部長っていつもお昼は、コンビニなんですか?」

「あぁ。まぁ夜もそんな感じだ」

「え!?それじゃあ体に悪いですよ!!」

「独り身は大体こんなものだ」



独り暮らしの男の人って皆そうなのだろうか?
まぁ、私もあまり人の事は言えないけど。


私も独り暮らしだし、仕事が忙しい日なんかはスーパーのお惣菜で済ましちゃうことが多いからな。
週末は作る様にしているけど……。



「栄養のあるもの……ちゃんと食べてくださいね?」

「俺の体を心配してくれているのか?」

「それはもちろん……えっと……。
橘部長には元気でいて貰わなきゃうちの部署みんなが困りますから……」

「フッ。そうだな。
偶にはコンビニ以外の物でも食べるか」



そう言って橘部長はコンビニの袋を鞄にしまうと、再び私の元へとやって来た。



「一緒に行ってもいいか?」

「え?でも……さっきの……」

「あれは夜にでも食べるさ。それとも俺と一緒じゃ嫌か?」

「と……とんでもないです!嬉しいです……凄く」



急な展開に頭がついていけない。
でも、凄く幸せな気分になった。

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