素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「橘部長」

「泰東……どうしてここに……」


どこか気まずそうな橘部長。
その隣にいたのは……。


「マコさん……」


私が良く知っている人だった。
なぜ2人が一緒にいるのだろうか、もしかして2人は付き合ったのだろうか?
どんどんとネガティブな考えが頭に浮かんでくる。

でも、どこか様子がおかしい。
マコさんはひと言も喋らないし、橘部長はマコさんを支えるように立っていた。


「泰東」

「は……はい」

「向日さんの家を知らないか?
酔いつぶれてしまったみたいで」

「マコさんは喫茶店に住んでいますよ」


マコさんが喋らなかった理由は分かったが、知らない方がよかったかもしれない。
だって一緒に飲んでいたという事が分かってしまったから。
ズキズキと痛む胸、一刻も早くこの場から立ち去りたい。
そう思いながら俯いていれば、私の気持ちを見透かしたかの様に翔也さんは口を開いた。


「じゃあ俺たちはこの辺で。失礼します。行こう夏香ちゃん」

「は……」

「泰東」


この場を立ち去ろうとした時、橘部長は私を呼び止めた。
思わず立ち止まってしまったが、早く帰りたい。
好きな人が別の女の人といる姿を黙って見れるほど私は大人じゃない。
泣きたくなるのを必死に堪えて笑顔を作る。


「何ですか?」

「一緒に来てくれないか?女性の部屋に勝手に入るのは気が引ける」


困ったように眉を下げる橘部長を放って置くことが出来なかった。

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