素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
しばらく、橘部長の大学時代のお話を聞いていた。
私が知らない橘部長を知れて嬉しいのに……少し胸が痛んだ。
私たちが出会ったのはここ最近で、それまではお互いの人生を歩んできた。
そんなの当然の事なのに、橘部長の事が遠い存在に思えて仕方がなかった。
「ついたみたいだね」
さっきまで黙っていた翔也さんが前を見ながら呟いていた。
それにつられて見れば、見慣れた喫茶店が目に入る。
マコさんの鞄から喫茶店の鍵を借りて中へと足を踏み入れた。
真っ暗な店内はいつもと違った雰囲気を放っていて少し怖くなった。
「大丈夫か?」
「あ……はい。大丈夫です」
暗闇で聞こえたのは橘部長の声だった。
辺りは暗くて姿は見えないけど声を聞くだけで安心する。
不思議と恐怖さは消えていった。
その時、パチンと音が響いたと思ったら急に周りが明るくなった。
「電気やっと見つかったよ。夏香ちゃん大丈夫だった?」
「あ……はい!ありがとうございます」
電気のスイッチを触りながら心配そうに私を見る翔也さん。
何だか翔也さんの顔が子犬の様に見えて私は笑ってしまった。
「……」
「橘部長?」
「……いや」
視線を感じ振り向けば橘部長は私の方を見ていた。
どこか様子がおかしかった気がする。
でも、橘部長に寄り掛かるように立っているマコさんの姿をこれ以上は見ていたくなくて直ぐに目を逸らした。
「寝室には私が運びます。
女性の寝室に男性が勝手に入るのはちょっと……」
本当にそう思って言った事だった。
でも、もしかしたら橘部長とマコさんがくっついているのを見たくなくて無意識に出た言葉だったのかもしれない。
私が知らない橘部長を知れて嬉しいのに……少し胸が痛んだ。
私たちが出会ったのはここ最近で、それまではお互いの人生を歩んできた。
そんなの当然の事なのに、橘部長の事が遠い存在に思えて仕方がなかった。
「ついたみたいだね」
さっきまで黙っていた翔也さんが前を見ながら呟いていた。
それにつられて見れば、見慣れた喫茶店が目に入る。
マコさんの鞄から喫茶店の鍵を借りて中へと足を踏み入れた。
真っ暗な店内はいつもと違った雰囲気を放っていて少し怖くなった。
「大丈夫か?」
「あ……はい。大丈夫です」
暗闇で聞こえたのは橘部長の声だった。
辺りは暗くて姿は見えないけど声を聞くだけで安心する。
不思議と恐怖さは消えていった。
その時、パチンと音が響いたと思ったら急に周りが明るくなった。
「電気やっと見つかったよ。夏香ちゃん大丈夫だった?」
「あ……はい!ありがとうございます」
電気のスイッチを触りながら心配そうに私を見る翔也さん。
何だか翔也さんの顔が子犬の様に見えて私は笑ってしまった。
「……」
「橘部長?」
「……いや」
視線を感じ振り向けば橘部長は私の方を見ていた。
どこか様子がおかしかった気がする。
でも、橘部長に寄り掛かるように立っているマコさんの姿をこれ以上は見ていたくなくて直ぐに目を逸らした。
「寝室には私が運びます。
女性の寝室に男性が勝手に入るのはちょっと……」
本当にそう思って言った事だった。
でも、もしかしたら橘部長とマコさんがくっついているのを見たくなくて無意識に出た言葉だったのかもしれない。