素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
私より遥かに身長が高いマコさんを運ぶのは凄く大変だ。
フラフラと歩いていればタメ息が聞こえた。


「泰東、見ていると危なっかしいのだが」

「す……すみません……」

「俺が連れて行こう。泰東が一緒なら問題はないだろう」


橘部長がそう言ってマコさんに手を伸ばそうとしていた。
これは橘部長の優しさだって分かっている。
だけど、子供じみた考えかもしれないが好きな人が他の女の人に触るのを見たくはない。
胸が締め付けられそうになった瞬間、私の体から重みがなくなった。


「俺が連れて行くよ」

「……翔也さん」


翔也さんは軽々とマコさんを抱き上げた。
そして私を見つめ優しく笑みをこぼした。


「夏香ちゃん一緒に来てくれる?」

「あ……はい」

「もう大丈夫だから泣きそうな顔しないで?」

「え……?」



翔也さんは私の耳元で小さく囁くと『行こうか』と笑顔で歩いて行った。

もしかして……。
翔也さんは私が橘部長とマコさんが一緒にいて欲しくないっていう想いに気が付いたんじゃ……。
それでわざわざ翔也さんが?
考えていれば私をせかす様に翔也さんは名前を呼んでいた。
急いで翔也さんの近くにいけばクスと笑っていた。


「夏香ちゃんってヤキモチ妬きなんだね?」


からかう様に笑う彼を見て確信に変わった。
翔也さんはやっぱり気が付いていたんだ。

だから……。


「……ありがとうございます」

「……何の事?」


最後まで惚ける翔也さんは本当に優しい人だ。
< 301 / 374 >

この作品をシェア

pagetop