素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「だが……お前が作り上げようとしている物は……。
使う人を幸せに出来る価値があると俺は思う」

「橘部長……?」



幸せに出来る価値……?
初めて言われた言葉に私は何も言うことが出来ない。
皆の視線が私と橘部長に向いているが、誰も口を開こうとはしない。
その時……。



「今回の企画案は泰東の企画書に決定する」



橘部長はさらっと言った。
だが、私たちにとっては本当に衝撃的なことだった。


だって私の企画が通るなんて入社して以来初めてで……。
嬉しいと言うより戸惑いを隠せない……。



「待ってください!
泰東のだけですか!?僕たちが作った他の企画書は……」

「言ったはずだ。
『俺は会社の利益ばかりを追求した物を商品化するつもりはない』と」



私と同期の人の質問に相変わらずの無表情で言い放つ橘部長にみんな不機嫌そうに顔をしかめていた。
まぁ大樹に至っては不機嫌じゃなくて“面倒くさそうに”だけどね。



「今回のプロジェクトチームは少人数でいく。
企画書を作った泰東をリーダーに、田辺、佐藤、俺が入る。
これで会議は終わりだ。みんな仕事に戻ってくれ」



みんな次々と会議室を出て行く中で私は動く事すらできなかった。
私の企画が通ったって言うだけで驚きなのに……私がプロジェクトリーダー!?
これは何かの冗談!?
それともドッキリ……?


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