素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「その様子だと……無事にくっついたみたいね!」

「本当に微笑ましいカップルだな~」


お母さんとお父さんに言われると何だか照れてしまう。
そんな2人に橘部長は平然と答えていた。


「まぁ……いろいろ迷惑はかけたが……。
ようやく結ばれたよ」

「まぁ!慎吾ったら本当に幸せそうね!」

「幸せだからな」


お母さんも橘部長もタイプは全然違うのに凄く仲がよさそうだ。
やっぱり親子なんだな……。


「夏香ちゃん……もしかして約束を果たす為に今日ここに来てくれたの?」

「……はい!やっぱり1番に報告したかったので」


お母さんの言葉に照れながらも私はしっかりと言葉にした。


「約束?」


1人だけ意味が分からない橘部長は首を傾げながら私を見ていた。
その視線がむず痒くて黙っていれば代わりにお父さんが答えてくれる。


「慎吾が連れてくる本物の彼女が夏香ちゃんであって欲しいっていう約束だ。
彼女の気持ちは分かっていたし……お前の気持ちも分かっていたからな」


お父さんの言葉に驚いたのは橘部長だけではなかった。
私も密かに驚いていた。
橘部長の気持ちも見抜いていたなんて……。
私は全く分からなかったのに……流石、親子だ……。


「夏香ちゃん!おめでとう!」

「あ……ありがとうございます!」


優しく、嬉しそうに微笑むお母さんに笑顔を返せば自分の事の様に喜んでくれた。
橘部長のご両親は前と変わらず……温かい人だ。


「結婚はいつするの?」

「けっ……!?」


お母さんの言葉に私は目と口を開いたまま動けなくなってしまった。
想定外の言葉に私の頭の回路は完全にショートした。


「母さん気が早すぎるよ。夏香ちゃんが固まっちゃったじゃないか」

「……それは俺たちのペースで決めるさ」


お父さんと橘部長は慌てることなかった。
もうすっかり慣れたかの様にお母さんをあしらっていた。
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