素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「た……橘部長……?」




おそらく橘部長だろう。
橘部長は無言で私にハンカチを突き出している。




「……涙を拭え」




私が受け取らない事に痺れを切らしたのか私の手に無理やりハンカチを握らせる。


橘部長の低い声にまた涙が溢れ出てくる。


でもそれは怖いとかそんな理由じゃない。
ただ……橘部長の声が心地よくてなんか安心して泣けてくる……。




「……あんなくだらない噂に左右されるな」

「……」

「お前は自分の手で企画を勝ち取ったんだ。堂々としていればいい」




慰めてくれているのか、橘部長は私に話しかけてくれている。
でも……。




「……すみません……橘部長にもご迷惑をおかけしてしまって……」




橘部長もあの噂を知っていたなら不快に感じたに違いない。
私のせいで巻き込んでしまって本当に申し訳ない。


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