素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「泰東!
久しぶりだな」

「お久しぶりです……部長。
これを渡すように頼まれて……」




販売部に着いた私は“元”企画開発部部長の所に行った。
今は販売部の部長をやっているらしい。


資料を渡しながら言えば部長は苦笑いを浮かべていた。




「ありがとな。
それと……もうお前らの所の部長じゃないんだ。
もっと楽にしろよ」

「そう言う訳にはいきませんよ」

「ったく……変なところで真面目だなお前は」




部長は呆れたように顔を緩める。
……部長のこんな穏やかな顔初めて見た気がする。
いつもは怒られてばっかりだったからな……。




「……どうだ?
橘とは上手くいっているか?」




いきなり橘部長の名前が出たからか、私の顔は一気に熱を帯びていた。
なんか……胸もドキドキするし……。


私はそれに気付かないフリをしながら部長に笑顔を向ける。




「……橘部長は……。
今までに出会った事がないタイプの人です」




一見クールで怖いように見えるけど……。
化粧品の事になると優しい笑顔を浮かべるし……。



それに……。
困ってる時とか、苦しんでる時は……。
なんだかんだ助けてくれる……。


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