素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「だから俺は橘の作った企画書を採用することはしなかった」

「……」




部長の顔はどこか悲しみが見られる。
何でかは分からないけど……。




「橘はそんな俺や会社の下では自分が作りたいものを作れない、そう思ったんだろうな。
自ら移動願いを出してきて、販売部に移動したんだ」

「じゃあ何故……再び企画開発部に……?」

「……諦めきれなかったらしい。
“自分の作りたいものを作る”その事が」




橘部長……。


私と同じだ……。
私も“誰かが笑顔になれる化粧品を作る”その事が出来ないと分かった時……。
会社を辞めようとした。


でも結局無理だった。
どこか諦めがつかなかったから……。




「橘が移動して何年もの間、俺はアイツのような企画書を作る者には出会わなかった。
そして……2年前にお前が現れた」




部長は軽く頭を抱えながらも私を見ながら笑っていた。




「初めてお前の企画書を見た時は本当に驚いた。
橘と似すぎていてな……。
だが……結局俺はお前の企画書も採用にすることはなかった」

「部長……?」




何故か部長の瞳には薄く涙が浮かんでいた。
何で泣きそうになっているんですか……?


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