素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「俺はお前たちが作ろうとしている物は心から素晴らしいと思う」




部長……。


前にも1度だけ褒めてもらった事がある。
その時は出来の悪い私に同情して言ってくれたとばかり思っていたけど……。
違う……のかな……。


部長は少し俯きながら話を続けている。
その声は震えているのが分かった。




「でも俺は会社に逆らう勇気がなかったんだ……。
逆らったらクビにされる……俺は……それが怖かった……」




部長の言葉に目を丸める私。
……部長も必死に戦っていたのかもしれない。
会社という……大きな組織と……。




「俺は逃げる事しか出来ず……。
その上……お前たちの頑張りさえ奪った。
本当にすまなかった」





頭を深く下げる部長に私はどうしてよいか分からずただオロオロとしていた。
周りからは販売部のみんなの視線が突き刺さる。




「部長!
顔を上げてください!!」

「泰東……」




部長はゆっくりと顔を上げ私を見る。




「部長には感謝しています。
仕事の厳しさもそれから……楽しさも部長が教えてくれたんですから!」



私はニィッと口角を上げる。


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