君への距離~僕らの未来~
2015年、大阪。
「お!また勝っとるやん」
都会的でお洒落なマンションの玄関で、ネクタイを緩めながらリビングから聞こえてくるプロ野球中継にため息をつくスーツ姿の男。
歳は28。
働き盛り。
「ん?いねぇの?」
いつもなら出迎えにきてくれる妻の姿が、今日はない。
首を傾げてリビングに歩いていく。
カバン、ネクタイ、靴下、上着…
男の通ったあとに、道しるべのようにそれらが散らばる。