君への距離~僕らの未来~
2時間前、
東京都久保田総合病院。
「リンゴむく?」
「…」
「…」
「…」
「ねー杏ーリンゴー…」
「もーうるさいなー
ちょっと今大事なトコ!」
杏はテレビのプロ野球中継に釘付け。
今は翼がバッターボックスなのだ。
「杏ちゃんは野球好きなの?」
隣のベッドの松崎さんが声をかけてきた。
松崎さんは今回三人目のベテラン妊婦さんだ。
「杏は野球じゃなくて平尾翼が好きなんですー」
リサが茶化すと、杏は頬を染めながら言い返す。
「野球だって好きだもん!」
「平尾って巨人のエースの?
あらあたしも野球は分かんないけどファンよ?
若くて可愛いじゃない!」
「杏はファンていうか…おく…」
カキーン
「打ったぁぁあああ」
杏は満面の笑みで大歓声。
「うるさい!ここ病院!」