君への距離~僕らの未来~





2時間前、

東京都久保田総合病院。









「リンゴむく?」






「…」








「…」







「…」








「ねー杏ーリンゴー…」








「もーうるさいなー




ちょっと今大事なトコ!」





杏はテレビのプロ野球中継に釘付け。






今は翼がバッターボックスなのだ。







「杏ちゃんは野球好きなの?」





隣のベッドの松崎さんが声をかけてきた。



松崎さんは今回三人目のベテラン妊婦さんだ。







「杏は野球じゃなくて平尾翼が好きなんですー」




リサが茶化すと、杏は頬を染めながら言い返す。







「野球だって好きだもん!」








「平尾って巨人のエースの?




あらあたしも野球は分かんないけどファンよ?



若くて可愛いじゃない!」







「杏はファンていうか…おく…」




カキーン




「打ったぁぁあああ」



杏は満面の笑みで大歓声。





「うるさい!ここ病院!」










< 48 / 73 >

この作品をシェア

pagetop