また、きみの隣で
離れたところで練習しようと、千鶴の横を通り過ぎた時、
「あのっ、もしかして…棗……?」
「…っえ…?」
後ろから声が聞こえた。
振り返ると、そこには千鶴がボールを持って立っていた。
「…あ、うん、そうだよ」
「あ、あの、あたし、千鶴。石川千鶴(いしかわ ちづる)。覚えててくれてた…?」
「え、う、うん…」
なんだコレ。違う。違いすぎる。むしろあの時と正反対。
中学の時とは明らかに違う態度に、あたしは戸惑いを隠せずにいた。
「…あの、あたし、どうしても棗に話したい事があったの。…今ちょっといい?」
「え……、…うん、わかった」
向かった先は、さっきの休憩所。人は、あたし達以外いない。
ドリブルの音が遠くで聞こえる。
椅子に、少しスペースを空けて座る。……なにを言われるんだろう……。