また、きみの隣で





その次の日から、瞳子は学校を休むようになった。


風邪もインフルエンザも流行っていない季節に、ひとつだけぽかんと空いた席。






〝いじめを止めて〟とカンナ達に言おうとした。





……だけど、口が開かなかった。



あの日、正しい事を言った瞳子は、いじめられるようになった。


自分がここで「いじめを止めて」と言ったら、次は自分がいじめの対象になってしまうんじゃないかと思った。



それが怖くて、なにも言えず、なにもできず、ただ時間だけが過ぎていった。








それから瞳子は一度も学校に来なかった。





……そしてもう二度と、この教室に戻ってくる事はなかった。




『突然ですが…うちのクラスの木村瞳子さんが、転校しました…』





………あたしは瞳子になにもできなかった。助けられなかった……。



空っぽの席は埋まる事のないまま、瞳子はいなくなってしまった。







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