つまりまだ『こども』ってことです
こどもなんです
キィィィンと大きな音でお店のシャッターが降りると美咲はほっと溜め息をついた。
とりあえず後は閉店したあとのお店の中を片付けるだけだ。

「美咲さん、これの替えはどこにありますか?」

洗剤のボトルを持った川田が厨房から声をかけてきた。

「あ?それは流しの下の右奥だって!」

「ありましたー」

美咲はまた溜め息を一つついた。洗剤の場所は確か先月教えたはずだ。

「私今からレジ締めるから、川ちゃん流し終わったらイスをテーブルに上げといて」

「了解っす」

美咲はレジのお金を数え、レジ締めチェック表に数字を書き込んでいく。お金のチャラチャラした音と、厨房からホールに移動した川田がイスを動かす音が静かな店内に響く。

ふと六時のレジチェック表がないことに気づいた。

「川ちゃーん、六時チェック表は?」

「六時………あぁぁぁぁ!!」

「なに!?」

「チェック忘れました!」

「はぁ!?」

「す、すいません!今日五時から二割引き始めたらめっちゃ忙しくなって、そのまま忘れました!」

「言い訳すんな!…いいや、明日店長に言っとくから」

「すいません…」

美咲はまた溜め息をついた。すると川田の表情が暗くなる。

「イス上げ終わったらチェック表に川ちゃんのサインしといて」

「了解っす」

「川ちゃん、オレンジジュースが冷蔵庫に無いけど、倉庫から持ってきた?」

「………あっ!」

「忘れた?」

「はい………」

「おバカ…いいよ、オープンの人にメモ残すから」

美咲はまた溜め息をつく。川田は美咲の顔を見て更に暗い顔をした。

川田に背を向けた美咲はショーケースに並んだ売れ残りのケーキを数え始める。
売れ残りの中で今日廃棄するものを箱に入れる。廃棄するものは従業員が持って帰ってもいいことになっている。
久々に大好きなチーズケーキが売れ残り、美咲は一人笑顔になる。廃棄の箱を持って振り返ると、美咲を見る川田と目が合った。

「…どうしたの?」

「あ、いえ、別に」

「手止めないの!十時までに帰るんだから」

「了解っす」

川田は慌てて閉店準備を再開した。



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