つまりまだ『こども』ってことです
「川ちゃんさ、いつまでもそれでどうするの?再来週から私いないんだよ?」

「はい…」

「私心配だよ」

美咲はお店の裏口に鍵をかけ、また溜め息をついた。川田は泣きそうな顔をする。

「子供か!怒られたくらいでしょげないの」

「美咲さんと俺一つしか年違わないし。美咲さんも子供だし!」

「はぁ?」

「イケメンのお客さんに話しかけられて浮かれるし、失敗したホイップつまみ食いするし、口悪いし、お姉さんぶるとことか逆に子供っぽいし、さっきもケーキ見て目キラキラさせるし」

美咲はだんだん怒りが込み上げてきた。

「私川ちゃんが頼りになるって思えたこと一度もないんだけど」

この一言は川田をキレさせるのに十分すぎた。

「誰のせいだと思ってるの?」

川田は美咲に近づき、すぐ横の壁に腕を激しく打ち付けた。川田らしくない行動に思わず美咲の肩が震えた。

「美咲さんがいなかったら、もっとちゃんとできるんだけど」

「は…?」

「美咲さんと一緒のシフトだと気が散って仕事に集中できません。俺だけに口悪く言うのも気に入らないです」

「つまり何が言いたいの?」

「好きなんですけど」

川田は真っ直ぐ美咲の目を見つめた。

「そんなこと…知ってるよバカ…」

川田の気持ちを美咲はずっと気づいていた。

「美咲さん、照れてるでしょ」

「照れてないし」

「キスしてもいいですか?」

「お、大人な感じで…してよ」

「言いながら照れないでよ」

川田の顔がゆっくり近づき、唇が美咲の唇と重なった。

「美咲さん、俺が着替えてる間にオレンジクリーム食べたでしょ?」

「た、食べてないし」

「じゃあ箱の中見せてよ」

「嫌ですけど」

「家帰るまで待てないとか子供か」

「黙れバカ…」

「ほんと口悪いな」

「うるさっ…私先輩だよ?何その、」


川田は美咲を黙らせるように唇を塞いだ。

二人の主導権はこの日を境に逆転し始めた。




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