永遠の果て
 聞き覚えのない声に、一瞬思考が停止したあと、慌てて声の主を振り返る。
 歳は高校生くらい、たぶん。少しつり目で、厚みのある唇。肩までの黒いストレートの髪。
 脳みそのどこを掻き回しても、覚えがない顔。

「…えっと、誰だったかな?」

 少女を気遣い、やんわりとした口調で問う。
 若さが満ち溢れていて、目の前にいるとなんだか眩しい。

 覚えていないことを知っても、少女は嫌な顔一つ見せずに後ろを振り返った。
 その先には、見覚えのある顔。

「やぁ詩織。久しぶり」
< 10 / 116 >

この作品をシェア

pagetop