永遠の果て
 テレパシーが使えるわけではない。心が読めるわけでもない。
 喋らなくても、気持ちは伝わる、なんてこと、なかなかできることじゃない。

 相手の心の中が見えたら、どんなに楽だろう。
 昔、そんなことを考えたのを思い出した。

 結衣ちゃんを撫でていた手を、緩やかに背中へ移す。

 涙を拭いたハンカチを差し出し、結衣ちゃんは立ち上がった。

「おばさん、私やってみる」
 ウサギとまでは行かないけれど、涙で赤く腫れた目をして結衣ちゃんは微笑み、背を向ける。

 激励の変わりに、段々と小さくなる影を、精一杯の笑顔で見送った。
< 103 / 116 >

この作品をシェア

pagetop