永遠の果て
 人ひとり分くらい通れるほどの隙間から、昔大好きだった背中が見える。広くて、温かい背中。
 甘くて、痺れるような記憶が、私の脳内を瞬時に満たしていく。

 耳の奥か脳内か、名残惜しそうにボールの音が消えていった。

 白のジャージに身を包んだ直樹は、振り返ると、ジャージの白よりも眩しい笑顔で私を見ていた。

 予想外のことに、直樹に目を奪われたまま、口を開くことも、歩くこともできない。

 だめだ。このままだとまた、昔の私に戻ってしまう。

 直樹と私の距離は縮まっていく。心の距離は少しだって縮まらないのに。

 気がつけば、直樹は目の前にいた。
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