永遠の果て
 玄関で靴を脱ぐ。壁に掛けてある、上品な花が描かれた絵画も、背丈を計った柱の痕も、昔のままだ。
 確かに、懐かしい香りはする。でも何故だろう、久しぶりすぎて、自分の家じゃないみたいだ。

「おばさん、早くおばあちゃんのとこ行こ」
「―っあ、ごめんごめん。なんだか懐かしくて」

 長い廊下を突き進み、結衣ちゃんはリビングに通じる扉を開けた。
 パタパタとスリッパの音が近づく。同時に
「詩織」
 母と目が合った。
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