永遠の果て
 キッチンから漂う香と、空腹に誘われて、食卓に腰掛ける。
 壁に掛けてある時計を見る。PM7:17。そろそろ、父が仕事から帰ってくる時間だ。

「母さん」
 鍋をかき回しながら
「なあに?」
『父さんは?』とっさに言葉を呑み込み、別の言葉を探し出す。

「何作ってるの?」
「ビーフシチュー。詩織、好きだったでしょう」
「うん。……私も何か手伝うよ」
 立ち上がり、キッチンに入る。
 29にもなって、ご飯を作ってもらうなんてなんだか申し訳ない。
 棚から三つ、シチュー皿を取り出した。私と、母と、父の分。

「ただいま」
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