永遠の果て
 一瞬、ほんの一瞬だけ、体が硬直した。背中越しに、父の気配を感じる。

「あなた、おかえりなさい」
 母に続き、素早く後ろを振り返る。
「おかえり…なさい」
 目が合う。一瞬顔をしかめたあと「ああ」視線を外された。
 世間体を気にする父だから、やっぱり私を簡単には許せないらしい。
 高校生のころ、結婚は我慢も必要だ。と言っていたのを思い出した。

「風呂に入る」
 そう言い残して、父はお風呂場へと消えてゆく。
「お父さんのことは気にしなくていいわよ」
 お風呂の用意をするのか、母も父の後に続いた。
 
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