永遠の果て
 目を開けた。夢の世界から、ズルズルと現実に引き戻される。
 アイマスクを外し、時計を見る。予定では、あと15分ほどで着くはず。

『僕はここを出ていくから、君が好きに使うといい』
 二人の匂いが染み付いたマンションの部屋を出るとき、彼は言った。慰謝料を受け取らないと言った私に対しての、せめてもの償いなのだろう。
 そしてまた、新しい女のところに行くのだ。

『わかったわ。けれどもう、この部屋に住むつもりはないの。ここを売って、そのお金を慰謝料としてもらうわ』
『そう、好きにするといいよ』

 まるで会社へと行くかのように、わずかな微笑だけを残して、彼は重い扉を開けた。

 それからの日々はあっという間に過ぎた。早々にマンションを売り、荷造りをした。いるものは少しの洋服だけ。彼に関わるものは、全て捨てた。
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