永遠の果て
 若いときはあんなに憧れていた東京にも、もう未練はなかった。

『行くところがないなら、うちに帰っておいでよ』
 離婚した。
 そう告げたとき、母はさほど驚かなかった。あまり深く干渉してこない性格に、いくらか救われたものだ。

 地元には、かれこれ10年ほど帰っていない。あそこは思い出がつまり過ぎて、考えるだけで胸が苦しくなる。

 携帯電話を取り出し、うす汚れたクマのストラップを手のひらで包む。 それは高校生のとき、あの人がくれたもの。

 …直樹、私まだ、あなたを忘れることができない。
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