永遠の果て
 雨に濡れたおかげで、少しばかり冷静になれた気がする。
 そして今やっと、自分がしていることを後悔した。

 こんなびしょ濡れの体では電車に乗れない。意味もなく、辺りを見渡す。
 視界に飛び込んできた、鮮やかな青い傘。その傘を差した人は、どんどんこちらに近づいてくる。

 私の目の前で、足が止まる。目が合う。
 小動物のような、物言いたげな瞳が、私を捉えて離さない。

 高校生くらいだろうか、ふわっとした栗色のくせ毛で、ベビーフェイスの男の子。可愛らしい、という表現がよく合いそうだ。

「……っ」
 男の子の華奢な手が、私の手首を掴んだ。

「黙ってついて来て」
 まだ声変わりもしてなさそうな綺麗なアルトで、男の子は小さく言った。
< 48 / 116 >

この作品をシェア

pagetop