永遠の果て
 涙も、イヤなことも、流せるだけ流して浴槽を出る。おかげで、体は芯からぽかぽか温かい。

 彼が用意してくれたであろう、グレーのジャージを手に取る。華奢なせいか、男物でもそれほどぶかくはない。
 それにしても、人は見た目では判断できないけれど、彼はどうしてここまでしてくれるのだろう。

 ここまでしてもらっておいて、疑ってはいけない。

 恐る恐る扉を開ける。
「出た?コーヒーでいい?」
 目が合う。扉を出てすぐのキッチンに立つ彼は、言いながらコンロに火をつけた。
「コ、コーヒーでいいです」
「ん、わかった」
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