永遠の果て
 冷静に見えるように振る舞えただろうか。
 今の私に、冷静さなど、皆無だ。
 体は勝手に携帯電話を探し出し、指は勝手に番号を押していた。

 コール音が体の中に響き渡る。
 自分が悪いわけではないのに、心臓はざわざわと騒がしい。

『晴海って高一のとき、細谷先輩が好きだったってこと』
 あるわけない、あの太田が、太田に限って……。

 いつもの、女っぽい太田の笑顔を思い浮かべる。
 ずっと、あの笑顔に騙されていた? ずっと、優しくしてくれてたのは嘘? ずっと、直樹のことを相談にのってくれてたのは……

『もしもし?』

 八回目のコール音のあと、気だるそうな声があらわれた。
< 59 / 116 >

この作品をシェア

pagetop