永遠の果て
 トイレから出て、手を洗う。ふと、鏡の中の自分と目が合った。

 童顔なせいか、昔とあまり変わらない顔立ち。

『詩織は化粧しなくても綺麗な顔してるな』

 思い立って鞄から化粧ポーチを取り出す。唇には、真っ赤なルージュ。
 私は、10年前の私とは違う。違うのに、

 鏡に映った私の顔は、唇にひいた真っ赤なルージュだけが、背伸びをしているように見えた。

 ポーチをしまい、トイレから出る。
 やっぱり、ここに来るべきではなかったのかも知れない。

 それなのに、私の足は私鉄の方へと進んでいた。
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