永遠の果て
『なっ……』
 言葉も出なかった。
 太田の発した言葉は、直樹との体の関係を示していたのだから。

『ねぇ、もう切っていい?私そんなに暇じゃないのよ。じゃあね』
 ツー、ツー。
 規則的な音が、耳の奥まで鳴り響く。

 嘘。ウソ。
 きっとこれは悪い夢。
 直樹に聞けば、いつもの調子で笑ってくれる、はず。

 淡い期待を胸に、直樹の番号を押す。
 一回、二回、コールが重なる度に苛立ちも募る。

 早く出て。そして大丈夫だと笑って。

『もしもし、……詩織?』
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