永遠の果て
 『社長』と言う言葉をワザと強調して発する。

「今まで通り太田でいいわよ。社長なんて恥ずかしいし」

 怒りながらも、次の瞬間、太田は吹き出していた。つられて、私も声を出して笑う。

 もうきっと大丈夫。大丈夫よ。

 笑い合いながら、頭のどこかで、ずっと直樹のことを考えていた。


「細谷先輩には会ったの?」
 急に真剣な顔をしたと思えば、太田の口からは、予想通りの言葉が出てきた。

「二回くらい会ったよ。だけど、挨拶くらいしかしてない」
 挨拶くらいしか出来なかった、と言ったほうが正しいのかもしれない。
「それでいいの?」

「いいの。今さら言うことなんてないから」
 嘘だった。
 言いたいことなんて、山のようにある。

「細谷先輩、結婚するらしいわよ」
< 94 / 116 >

この作品をシェア

pagetop