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「あ。由香さんだ」
私を見つけると、まるで人懐っこい仔犬のように駆け寄ってくる彼。
「………藤島、くん」
ただ名前を口にしただけなのに、私の心臓の動きは驚くほど速くなる。
「お昼、食べました?」
「……うん」
「そっか。オレ、今からなんです」
「そう」
今日も爽やかな笑顔で私を見下ろす藤島くん。
ごめん。
今日は、できれば会いたくないと思っていたの。
「………どうか、したんですか?」
だって。
朝から、あんなことやこんなこと、した相手だもの。
私、平常心でいられる自信がない。